Consummatory Life

英米文学専攻の大学生が、もっぱら言語学、心理学、脳科学の話をテーマに、人間や社会について、感じたことを発信していきます。より良い人生を開発していくことを目指します。

ゲシュタルト (Gestalt) とは? -- 「ゲシュタルト・スウィッチ」の不可欠性

”皆さんこんばんわ!DOPAです^^

今日は、連載2週目で「抽象的 vs 具体的」〈第2弾〉になります!

 

今回、皆さんにお伝えする内容はゲシュタルトという概念です。

なぜ「ゲシュタルト」の概念の話をするかというと、普段の我々の思考において、とても大切になってくるからです。我々の知覚や認知には限界と傾向があります。私たちが日々の生活を営む中で、もしくは何か目標を達成しようとするにあたって、人間の物事の認識に対する限界や傾向を知っているのといないのでは、多きな差が出ると思うんです。

いわば、誤った方向に無暗矢鱈と努力をしても仕方がないということです。

 

ですので、今回は皆さんに「ゲシュタルト」について少し馴染んでもらいたいと思います。

 

まず、ゲシュタルトとは、元々はドイツ語で「形態」を意味する単語です。

 

しかし大事なのは、認知科学において「ゲシュタルト」が「全体は部分の総和以上のものである」という意味で用いられるということです。つまり、要素を単純に足し合わせただけではなく、「全体性としてのマトマリをもった構造」がゲシュタルトというわけです。

これは、「還元主義」(部分や要素を単純に合成していけば全体になるという考え方)に対立する考え方です。

 

ドイツ人心理学者マックス・ウェルトハイマー「仮現運動現象」(図1)を発見し、『運動視の実験的研究』(1912)を発表したころからゲシュタルト心理学」(Gestalt psychology) が始まったとされます。

 

(図1)

 

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(図1)を見てください。「バイオロジカル・モーション」というのですが、左側の列を矢印の方向に順に追えば、人が動いているように見えませんか?

 

しかし、個々の白マルは、単なる運動をしているにすぎません。では、なぜこのように我々はあたかも人間が歩いているような運動知覚をしてしまうのでしょうか?

 

そこで、ウェルトハイマーはあることに気がつきました。それは「人間は刺激を単純なものとして知覚しようとする傾向がある」ということです。これは「プレグナンツの法則」と言われています。我々は、個々の物体(物事)だけを見ているつもりでも、脳は無意識に「全体との関係性の中で」それを捉えようとしてしまいます。

 

脳は起こること全てを「過去の知識(記憶)を参照して」認識するので、実際には対象は何ら関係のない物事でも、過去の記憶の中からゲシュタルトを形成し、それ風に解釈を変えてしまいます。それも無意識に!ですので、脳は「ありのままの現実」を見ている訳ではありません。

いわば、現象を脳がやりたいように解釈した結果が我々の認識であって、それが私たちにとってのリアリティなのです!

 

以上、「ゲシュタルト」について長々とした説明になてしまったのですが、次週の「抽象的 vs 具体的」〈第3弾〉につながる極めて重要な概念となってくるので、実際はまだ語り足りないくらいです(笑)

以下に要点だけ復習しておきます!

 

【Point】

人間の脳は、対象物が集合すると、しばしば無意識的に、それらを個々の物体としてではなく、"瞬時に「全体との関係性に照らし合わせた」上での 認識" をします。

→いわば、「全体と部分の間に双方向の関係がある」ということ

(何ということはない。我々の知覚がそもそもゲシュタルトなんです!)

 

ゲシュタルトを2個同時には持てない

そして、重要なことがあと1つあります。

それは、いくら我々が「部分が合わさった全体としてのマトマリ構造」として物事を認識する傾向があるとはいえ、ゲシュタルトは同時に複数持つことができません。つまり、状況や認識したいものによってゲシュタルトを瞬時に切り替える必要があります。

 

(図1, 2, 3)※左から

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(図1)「ジャストローのアヒルとウサギ」

(図2)「ボーリングの老婆と美女」

(図3)「ルビンの壺」

 

みなさん、一度は見たことがある絵画ばかりですよね?

 

図1は有名なジャストローの絵画で、見方によってはアヒルというゲシュタルトになったり、ウサギというゲシュタルトになったり…その両方に見えますよね?見たことのない方は、今試してみてください。

図2も有名なボーリングの絵画で、見方によっては「老婆」にみえたり、「若い美女」に見えたり…2つのゲシュタルトに変化します。

図3は、おそらくこの中で最も知られている「ルビンの壺」です。見方を変えると、ゲシュタルトが「壺」になったり、「2人が顔を寄せ合っている姿」になったり。

 

面白いですよね。

しかしここで重要なのは、「同時に両方は認識できない」という点です。すなわち、ゲシュタルトを同時に2個は持つことができない -- ということです。

 

我々はゲシュタルトは同時に2個は持てないため、片方ずつしか認識できないんです。このゲシュタルトの瞬時の入れ替えを「ゲシュタルト・スウィッチ」(Gestalt switch) といいます。

 

例えば、「赤い車が道路に何台通るか」数えているとしましょう。

「赤い車の数」を意識している時に、我々の多くは「その車がTOYOTAだったか、HONDAだったか、はたまたBMWだったか」ということには気づけません。

→すなわち、「赤い車」というゲシュタルトを持っている時は、車の機種に関する情報は「スコトーマ」(盲点)に隠れてしまうのです。同時に両方を意識することはできません。

(何故なら、脳にはRAS(網様体賦活系)という機能があって、何かを意識上に持ってくるとき、その他の情報はRASのフィルターにかかり、無意識化に追いやられているからです)

 

※ちなみに、見えている方(「前景化」されるゲシュタルト)を「図」(figure) / プロファイル (profile) といい、一方が見えている時に「背景化」されて隠れているもう一方を「地」(ground) / ベース (base) といいます。

 

いかがでしょうか?少しは人間の認知のメカニズムが分かってきましたでしょうか?

 

この「ゲシュタルト」や "RAS" という人間の知覚・認知のメカニズムを知っておかないと、無駄な努力をしてしま足り、挙句の果てに「私には能力がないんだ…どうせ私が努力したところで、何も変わりやしない…」などと目標達成をあきらめてしまいかねません。

 

臨機応変に、新たなゲシュタルトを随時、作り上げていかないといけないのです。

 

これで今回の内容はお終いです。最後まで読んで下さり、ありがとうございました^^

 

何故か今一イメージが湧かない…と思っている方々が大多数でしょう。でも心配ありません。今回は極めて抽象的な説明になってしまいましたが、仕方ないのです。何故なら、我々人間の認知がそもそも抽象的なんですから…

次週の連載「抽象的 vs 具体的」〈第3弾〉において、具体的に目標達成のために、抽象的思考と具体的思考という「ゲシュタルト」を、いかにして状況に応じてスウィッチさせるのか、説明していきます!

 

楽しみにしていてください♪ 

ではまた来週~

 

※(図1)以下のHPから引用

 https://ardbeg.c.u-tokyo.ac.jp/pc/studies/2005/hirai.html 

 

抽象的思考と具体的思考 ― 〈視点の高さ〉と〈情報量〉から考える!

こんばんわ!DOPAです^^

今日は、連載「抽象的 vs 具体的」〈第1弾〉です

 

このテーマに関しては今回が初回なので、まずは「抽象的」「具体的」といった用語の意味について「視点の高さと情報量」の観点からやや詳しくしていきたいと思います。

具体的と抽象的

皆さんは、友達や知り合いと話しているときに、「もっと具体的に言ってよ!」と言われたり、はたまた、議論中に自分の意見に対して他の人から「それは抽象論にすぎない」などと言われてショックを受けた経験はありませんか?。

 

でも、そもそも「具体的」や「抽象的」とは、どういった意味なのでしょうか?

 

大学受験で現代文を勉強した経験のある方であれば、これらの用語について親しみ深いかもしれません。また、そうでない方も、日常的な日本語の会話の中で意識することなく使っていると思います。「具体的」といえば「分かりやすい」クリアなイメージを、「抽象的」といえば、何となくお茶を濁したような「分かりにくい」イメージを抱かれると思います。

そういう感覚は間違っていません。

 

今回は、それらの持つ意味について、

認知科学者の苫米地英人の著書『心の操縦術』(PHP文庫)にならい、

1. 「視点の高さ」2. 「情報量」

という2つの観点からアプローチしていきます!

心の操縦術 (PHP文庫)

心の操縦術 (PHP文庫)

 

実はこの本、プロ野球巨人の原監督もお読みになり、大変感動したと言われている本なんです。是非みなさんも一読してみてください。新しい思考法や、何らかのヒントが得られるだろうと思います。

 

さてここで、本題に入る前に少し余談なのですが、勝間和代さんが、ご自身の著書『高学歴でも失敗する人、学歴なしでも成功する人』(小学館101新書)の中で「頭がいい」もしくは「優れた」人に関して、次のようなことを述べています。

 

彼女によると、「アカデミック・スマート」(academic smart) ではなく、「ストリート・スマート」(street smart) という観点で「頭がいい」もしくは「優れた」というのは、インプットに関しては、「世の中の情報の真偽をしっかりと見抜いて、ほかの人が気づかなかった情報を持っていたり、あるいは、さまざまなあふれる情報の中から、『より良質なものを抽出できたりする能力』」(二重括弧は筆者)のことだと。

 ここでいう、情報を「抽出する」能力と、いま問題としている「抽象的」とは、意味的に密接な関係があります。

 

そもそも、「抽象」というのは、「複数のものから、全てにおいて共通する1つの特徴だけを『抽出する』こと」を言います。そして、その過程において、その特定の(抽出された)全てに共通でない特徴は切り捨てられます。それを「捨象」といいます。何かを「抽象」すると、必ず何かを「捨象」することが同時に起こるので、英語では abstraction という単語で両方が意味されます。

 

 

例えば、イヌ、ネコ、ゾウ、キリン、ブタという5種類の動物がいたとします。

それらに共通する特徴は何があるでしょう?

そう、「動物」ですよね。

それ以外にも、「哺乳類」「生物」「有機物」「目がある」「毛が生える」, etc. 何でもありです。

 

重要なのは、そう答えたときに、我々が「抽象化」という行為を行ったということです。そして、その「抽象化」を行えば、必然的にその他の特徴は「捨象」されています(例えば、イヌが「ワンと吠える」こと、ネコが「ニャアと鳴く」こと、ゾウは「鼻が長い」こと、キリンは「首が長い」こと、ブタは「太くてブゥと鳴く」こと, etc.)。

 

それでは、「具体的」とは何でしょう?

ネットの『Goo辞書』の「具体的」の定義は、「はっきりとした実体を備えているさま。個々の事物に即しているさま」とあります。

 

逆に「抽象的」の定義は「いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま」とありました。つまり、「抽象化」とはある種の「一般化」とも言えそうです。

 

 

これらのような辞書の定義でも良いのですが、あまり日常生活や仕事、ビジネスで使えそうな説明ではありません。

以下では、もっと踏み込んだ、現実的 (practical) な解説をしようと思います。

 

「視点の高さ」と「情報量」から考える

ここで、皆さんにエジプトの墓、ピラミッドを思い浮かべてもらいましょう。

(※ピラミッドを登るときは、自分の目線より下しか見えないということにします)

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高く上がれば上がるだけ、より遠くが見渡せるようになりますね。しかし、ピラミッドの面積はというと、逆に、高く上がれば上がるだけ小さくなっていきます。

 

ここでの「高さ」を「抽象度」(視点)、ある高における「面積」を「情報量」としましょう。そして、「抽象化」(もしくは抽象的な思考をする)という行為は、物事をより高い視点で見渡すということです。

 

すると、抽象化をすると、「視点」が高くなりますが、その地点のピラミッドの面積=「情報量」は減少します。しかし、見渡せる範囲(潜在的な情報量;ここでは、自分の地点より以下のピラミッドの体積)は増加します。

 

先ほどの、5種類の動物を例にとりましょう。

 

             動物

           ↑

    イヌ、ネコ、ゾウ、キリン、ブタ

 

「イヌ」や「ネコ」など五種類の概念を「抽象化」したのが「動物」という概念です。

つまり、抽象度(視点の高さ)が上がった分、概念に含まれる情報量は減りましたよね?

 

最初はここの理解に少し苦しむのですが、こう考えればいいでしょう。

「動物」という概念に、「4本足で歩く」「ワンと吼える」「ペットとして一般的に飼育される」「走るのが速い」「聴覚と嗅覚がとてもいい」などの情報を加えていって、やっと「イヌ」という概念にたどり着きます。したがって、「イヌ」よりも「動物」のほうが情報量は少ないわけです。

 

しかし -- そして、ここが盲点なのですが -- 確かに、「動物」という概念自体が持つ情報量は、「イヌ」のそれより少ないのですが、

 

「潜在的に持つ可能性のある情報量(見渡せる範囲)」という意味では、「動物」のほうが「イヌ」よりも多いんです。

 

だって、「動物」であれば、「イヌ」でも「ネコ」でも見渡せるわけですが、「イヌ」や「ネコ」は「動物」という概念は見渡せません(※ピラミッドでは、自分の目線より下しか見渡せない約束でした)。だって、「イヌ」が他の「動物」である「キリン」にはなれないでしょう?

でも、「動物」であれば、「キリン」は(潜在的な情報としては)含まれていますので、いざという時に「動物」は「キリン」という抽象度に降りてくることは十分に可能です。

 

繰り返しますが、抽象度は必要とあれば「降りてくる」ことはできるのですが、「上がること」はできません。すなわち、

 

「抽象的思考ができる人であれば必ず、降りてきて具体的思考も同時に行うことができる」は問題なく正しいのですが、

 

その逆の、

 

「具体的思考ができる人であれば必ず、抽象的思考を行うことができる」は偽であって、必ずしもそうとは言えません。

 

だからこそ、抽象的思考の能力だけは訓練して磨かなければならないのです。

 

 

以下において、「抽象的」と「具体的」という言葉を再定義し、要点をまとめます。

 

【Point】

〈抽象的〉思考

概念や物事を、より高い視点(情報空間)でとらえること。この能力は必要に応じて、訓練しないと身につかない。

◎メリット→見渡せる範囲が大きくなるため、グレインサイズ(1回の思考で扱える範囲)が大きくなるため、仕事が速くなる。

×デメリット→詳細は飛ばして要点のみを扱うため、個々の事柄の臨場感は減り、リアルに正確には扱えない。

 

〈具体的〉思考

物事を最も抽象度の低い空間(物理空間)でとらえること。この能力は生まれつき誰にでも -- 言ってみれば、サルやチンパンジにも -- 備わっている。

◎メリット→(1回の思考で扱う対象を「そのもの」に限り)見渡せる範囲は少ない分、詳細までリアルに見ることができる。

×デメリット→見渡せる範囲はゼロ。その時に見ている物(そのもの)しか見れない。いわば、物事をコンサマトリーに眺めること。「いま」「ここ」にしか当てはまらないので、汎用性は限られている。また、「概念」については扱えない(※何故ならば、概念そのものが抽象的であり、かつ形や臨場感が存在しないから)

 

ぜひ、皆さんも抽象的思考の能力 -- すなわち、さまざまなあふれる情報の中から「より良質なものを抽出できたりする能力」-- に磨きをかけて成功を勝ち取りましょう。

 

次週のブログ、

連載「抽象的 vs 具体的」〈第2弾〉では、新たにゲシュタルトという概念を紹介します。このゲシュタルトの概念は、「抽象的思考」にモロに繋がってきます。ゲシュタルト形成=抽象化です。

 

それでは、楽しみに待っていてください!!

今日はここまで読み進めてく下さってありがとうございました。

 

それではまた来週(^^♪

最先端の英語学習法(コロケーション)―独学で、ここまで出来る!

こんにちは!前回に続いて、今回も英語に関する記事をお届けします。テーマは、

コロケーション (collocation)コーパス言語学 (corpus linguistics) です。

 

前回は主に、「ネイティブの感覚に限りなく近づこと」を目標に、「認知文法 (Cognitive Grammar)の概念を少し紹介させて頂きました。それによって、学校教育で教わる「従来の英文法」がどれだけ理論的に不十分で、かつ、どれだけ無駄な暗記事項が多いか、少しだけでも納得頂けたかと思います。

そして今回は、以前に紹介出来なかった有益な概念、コロケーション (語と語の結びつき) と、コロケーションを独学で身につける方法を、コーパス言語学の観点から、少し紹介させて頂きます。現行の学校教育では教わることのないものですが、英語を受信(理解)するだけでなく、自ら発信(運用)していくのに、必要不可欠な知識です。

 

コロケーション (collocation)

ご存知の方もいるかもしれませんが、英語を学習する上で、「コロケーション」はとても重要な概念です。これは、簡単に言えば「語と語の結びつき」のことを意味します。例えば、句のレベルで、日本語で「Aに影響を与える」といった動詞句に該当する英語は、一例として、

 

(1) have an influence on A

 

ように表すことが出来ます。ここで重要なのは2点あります。それは、

 

1. 名詞influenceに対して、動詞haveが連結している →have an influence 

2. 名詞influenceに対して、前置詞onが連結している →an influence on B

 

ということです。すなわち、名詞influenceのコロケーションは、左側に動詞have, 右側に前置詞onをとることが分かると思います。これは名詞のコロケーションの場合ですが、同様に英語には、名詞、形容詞、動詞、前置詞...など、全てのレベルでのコロケーションが存在し、コロケーションが弱くなっていけばいくほど、その表現が受け入れられにくくなります(難しい表現を使えば、「容認度 (acceptability)」 が下がると言います)。

例えば、先ほどの「Aに影響を与える」という日本語を、英語に逐語訳 (word-for-word translation; literal translation) して、(2) のような英文を作ったとすれば、  

 

(2) ?give an influence to A

 

文法的には正しい英文であっても、 コロケーションの観点から言えば極めて不自然 (strange) と判断されます。

 

多くの場合、日本人英語学習者がネイティブ話者に不自然だと言われる場合は、主に以下の3つの場合があると言えます。そして、 この3つの中でも、

 

1. コロケーションに問題がある場合

2. 文体 (style)口語 (spoken) 文語 (written)―の使い分けができていない場合

3. コロケーション、文体、共に問題ないが、語の選択 (word choice) 自体に問題がある場合

 

そして、 この3つの中でも、 中級レベルの学習者に最も多いのが、「1. コロケーションに問題がある場合」であると言えそうです。コロケーションにおける問題とは、簡単に言うと、「そんな表現は英語にないよ」というレベルでの過ちです。これは、多くの英語を読んだり聞いたりしてさえいれば自然と表現のストックが増えていくので問題ありませんが、日本人は「日本語の逐語訳では適切な英語は話せない」と頭ではしっかり認識していながら、いざ話すとなると無意識にこの「逐語訳」をしてしまう傾向があるように感じます。

 

以下では、「コーパス言語学」という分野の知識を利用して、圧倒的なスピードで身につけられ、なおかつネイティブ話者に聞かなくてもいいコロケーション学習法」をお伝えします。簡単で有名な方法には以下の2つあります。

 

1. Google検索」を利用する方法

2. BNC や COCA などの「言語コーパス (linguistic corpus)」を利用する方法

 

今回は、1のGoogle検索法」を紹介します。

Google検索で可能なコロケーション学習は以下の2つ。

 

1. 表現(コロケーション)が正しいかどうかをチェック

2. どんなコロケーションをとるか調べる

 

そして、Google検索では、必ず調べる語句を引用符(" ") で囲み、その後に「半角スペース」空けて、site:us (site:uk) (スペースなし)を付けて検索にかけます。これだけです。アメリカ英語(イギリス英語)の指定がないと、非ネイティブのデタラメな英語も含まれるので、必ず site:us もしくは site:uk 指定してください。

 

例えば、1において、"have an influence on" という表現そのものが正しいか(ネイティブによって使われるか)どうかをチェックするためには、以下のように検索をかけます。

 

"have an influence on" site:us ―約36,300件

 

すると、約36,300件のヒット数が得られるので、「まずは使われる表現だろう」と推測を立てることが出来ます。

 

これに対して、先ほどの不自然な英語の例として挙げた "give an influence to" という表現を、同じ方法で検索にかけてみると、

 

"give an influence to" site:us ―4件

 

4件しかヒット数が得られず、流石にこれは不適切な英語表現だということが分かります

 

次に、2において、「...に影響を与える」という日本語を英語にするとき、名詞influenceがどんな動詞によって導かれるかが分からないときに、その動詞を調べる方法です。以下の様に、動詞の部分をそのままアスタリスク (*) に変えて検索にかけて下さい。

 

"* an influence" site:us

 

すると以下のように、検索をかけた(引用符で囲んだで)部分が全て太字(ゴシック体)になって結果が得られます

 

...have an influence on the G-3 decision-making process...

...have an influence?...

...But, when there is an influence,... 

...exert an influence...

 

注意深く観察したいときは、検索結果のページを何ページも行ったり来たりして確認してください。以上の結果から、名詞influenceは、動詞have, exert, there isによって導かれる場合が圧倒的に多く、これらのコロケーションが良いことが分かります。そして、付随的に、名詞influenceの後には前置詞onが後続することも分かりました。

 

また、「...な影響を与える」というように、名詞influenceに先行する形容詞には、どのようなものが高頻度で使われるか調べたいときには、形容詞の位置にアスタリスクを入力して、

 

"have a * influence" site:us

 

と検索にかけます。すると、結果は、以下の様になります。

 

have a negative influence

have a positive influence

have a strong influence

have a great influence

have a major influence

have a huge influence

have a substantial influence

have a significant influence

have a powerful influence

have a tremendous influence 

 

よって、名詞influenceは、これらの形容詞negative, positive, strong, great, major, huge, sabstantial, significant, powerful, tremendousとのコロケーションが良さそうだと推測できます。(検証するために、これらの表現を個別に再度Google検索にかけて、ヒット数(頻度)を比較してみて下さい

 

これで、Google検索を使ったコロケーション学習法は終わりです。

Google検索の注意点として、これらはあくまでも「一時的」なものであって、さらに詳しく辞書などで確証しなければならないという点が挙げられます。何故かというと、単にwebに使用例があるだけでは、言語として適切な表現だということを100%証明することは出来ないからです。

 

Google検索法の他にも、BNC (British National Corpus) , COCA (Corpus of Contemporary American English) などの、「言語コーパスを使用すれば、さらに正確なデータ効率よくスピーディーに収集することが出来ます。以下にURLを貼っておきます。使用は無料です。是非、使用してみましょう。ひとたび使えば、魅了されるはずです(笑)

http://corpus.byu.edu/bnc/

http://corpus.byu.edu/coca/

 

また、最近はこれら言語コーパスなどの発展によって、英語学習は数十年前と比較にならないほど効率化しています。それでもなお、日本人の英語力に目に見えるほどの変化がないのは、本当に不思議な現象に感じられます。

 

以下に、「コロケーション」や「コーパス言語学」の参考書を載せておきます。

コロケーション事典などは、本来であれば自分でコロケーションを調べなければならない苦労を、コロケーション事典の作成者方が引き受けてくれています。使わない手はありません。怪しげな "英会話本" を読んでいる時間があれば、『コロケーション事典』を読みましょう! 

プログレッシブ 英語コロケーション辞典

プログレッシブ 英語コロケーション辞典

 

  

〈コーパス活用〉英語基本語を使いこなす [動詞・助動詞編]

〈コーパス活用〉英語基本語を使いこなす [動詞・助動詞編]

 

 

〈コーパス活用〉英語基本語を使いこなす [形容詞・副詞編]

〈コーパス活用〉英語基本語を使いこなす [形容詞・副詞編]

 

 

そして、「コーパス言語学」に関する知識ですが、英語教師を目指される方であれば、BNCやCOCAを使えるくらいにはなっておくべきです。なぜなら、単語や熟語、構文などを教える時に、コロケーションとして高頻度の順に教えなければ意味がないという点と、生徒の英作文などを添削するときに、コロケーションの知識がモロに要求されるからです。以下に、日本の代表格とも言える研究者の著書を載せておきます。この3月に出版されたばかりのものです。Google検索法や COCAなどのコーパス使用法、生徒の指導への応用法などが、大変詳しく解説されています。英語教師志望には必携の一冊だと思われます。

英語教師のためのコーパス活用ガイド

英語教師のためのコーパス活用ガイド

 

 

今回は、「コロケーション (collocation)」についてでした。

次回は、予定を変更しまして、今回紹介できなかった「情報構造」(information structure) について書きます。

今回は数時間投稿が遅れてしまいましたが、来週も同様に日曜日です。お楽しみに♪

では、

 

英文法の知られざる盲点―「話せないのは文法のせい」は本当か??

  久々の投稿となりました。いつもブログを読まれている方はありがとうございます。期待を裏切ることないように、しっかりとした内容を書いていくつもりであります。また、これからは、週1でブログを更新していきます。

さて、今日は英語について、とりわけ「英文法」についてのお話です。言語学、とりわけ「認知言語学 (cognitive linguistics)」の観点から重要なところをピックアップしました。

認知言語学」なんて聞いたこともない人もいるでしょうし、あくまで皆さんが知っている「英文法」についてのお話なので、大丈夫です。気にせず聞いて下さい。しかし、高校英語では(教えてもらうべきなのに)習わない、ハッとするような盲点があるかもしれません。

「こんな違いがあったのか!」

「だったら英文法をもっと真剣に捉えなければ…」

そのように感じて頂けるところがあれば光栄です。今日の内容は以下の2つです。

 

1. そもそも「文法」とはどんな機能を果たすか?

2. 会話やコミュニケーションに「文法学習」は必要ないのか? 

 

大学入試 世界一わかりやすい 英文法・語法の特別講座 (「世界一わかりやすい」特別講座シリーズ)

大学入試 世界一わかりやすい 英文法・語法の特別講座 (「世界一わかりやすい」特別講座シリーズ)

 

 

結論から入ります。

1. に関してですが、まずは「文を生成するために必要なもの」です。SVO, SVCなどの「文型」や、動詞、接続詞、名詞などの「品詞」、さらには仮定法なんかの「法」など、高校時代に使った文法書に載っているようなものです。これらの知識無くしては文 (sentence) を組み立てることが出来ません。非文法的な文をいくらしゃべっても、意味を成しません。

例えば、以下の2つの文には1つ、非文法的なものが存在します。どちらでしょう?

(a) Tom gave Mary a book.

(b) Gave Tom a Mary book.

答えは (b) です。簡単ですよね。SVOO の「第4文型」で正しいのが (a) になります。解説は必要ないと思います(言語学的には、解説するのにもそれなりに労を要しますが…笑)

では、以下の2つはどうでしょうか?「鳥のように空を飛べたらなぁ…」を表わすのに文法的なのは?

(c) I wish I can fly like a bird.

(d) I wish I could fly like a bird.

はい「仮定法」です。よって (d) が正解。解説はしません(話の内容と異なるので)

 

けれども、今日の話で重要なことは、こんな初歩的な事ではありません。大学へ進学された方なら、「俺らは受験勉強をしたんだ。バカにするなよ!」 と思うはずです。また、当然のごとく、「日本人は文法にこだわり過ぎるから英語を話せなくなるんだ」と言っている人々も、このレベルの文法知識のことを言ってるわけではありませよね。もし上の (a), (b), (c), (d) レベルの知識がないと、「コミュ二ケーション」を強調したい人々も、残念なことに「ミスコミュニケーション」で終わってしまいます(笑)

 

重要なのは次のレヴェルです。

それは、会話(コミュニケーション)において「文法」の果たす機能です。簡単に言えば、「高校英文法」+α が肝心だという意味です。そして、まさにここが「盲点」になります。すなわち、2. においては、簡単に「文法」と一括りにしていますが、正しくは「文法・語法」くらいの意味です。(厳密には、「学校英文法・語法」+「認知文法」や「コロケーション」(語と語の結びつき)その他の文法に関する言語学的知識などを集積した意味での「文法」をさします。※「コロケーション (collocation)」 に関しては、上記の「情報構造」と共に、機会を改めて詳しく見ていきましょう)

恐らく、読者の中には僕なんかより、もっと英文法に詳しい方もいらっしゃると思います。しかし、大学生になってから「文法」の勉強をした記憶のある方はごく少数な気がします。せっかく大学受験まで英語を勉強してきたのに、大学入学したとたん TOEIC や "英会話" (僕には、この "英会話" という言葉の意味が分かりません。会話だろうが文書だろうが、「英語」に変わりはあません)に飛び移ります。

全く問題ないことなのですが、文法に目を向けないところが良くありませんTOEIC の Part5 で3問以上落とすようであれば、文法が怪しいとも言えます)。そういう人に限って、「英語がうまく使えない」と言ったりするのですが、当たり前です!さらなる上のレヴェルでの「英文法」を習得しましょう。これは、「ネイティブの持つ英語の「感覚」を身につけること」と同義です。そのような意味での広義の「文法(能力)」です。

大学に入ったからこそ(英語を使う環境に近くなったからこそ)、「文法の理屈」を学習するべきだと思います。「ネイティヴに近づこう」とするためにも、「なぜこの表現を使うのか?」「なぜこの文法表現を使うのか?」―そういったことを知る必要があります。

 

前置きが長くなりました。では、本題に入ります。「学校文法」が完璧にマスターできていることを前提に、以下に向けてさらなる高みを目指していきましょう。

まずは、高校で学ぶべきなのに何故か教えてもらえない英文法事項を、いくつか問題形式で紹介していきます。これらの内容は、詳しい(良い)文法書ならば載せているような内容ですが、理屈までは載せていません(辞書はキレイにまとめることが目的です)。

大学において、言語学(とりわけ「認知言語学」)を学んだことがある方ならば、誰でも知っている内容です。いいいですか?知っててスゴイことではありません。当然のごとく知っていないと、自ら英語を発信していくことも、それ以前にネイティブ話者の話を理解することすらできない のです。決して自慢ではないですが、以下のことについては僕は高校生の時から知っていました(言語そのものに対する捉え方さえ変化したにせよ、「会話にこそ、最も文法が大切だ」という考えは、高校時代から依然として変わりません)。ではトライしてください。

例解 和文英訳教本 (文法矯正編) --英文表現力を豊かにする

例解 和文英訳教本 (文法矯正編) --英文表現力を豊かにする

 

 

以下の2つの英文で、Ken が英語を 「習得した」 ことに焦点があてられている表現はどっち?

(e) Mr. Tanaka taught Ken English.

(f) Mr. Tanaka taught Englsih to Ken.

難しいですか?答えは (e) です。(f) は、 Mr. Tanaka が英語を教えたのは(誰か?という文脈で)「(教えたのは)Kenだ」という意味合いがどちらかと言えば強いです。これは「他動性 (transitivity)」や「情報構造」という観点から説明可能です(因みに、(e) のセンテンスはSVOO(第4文型)ですが、言語学用語では「二重目的語構文 (double object construction)」と呼ばれ、(f) はSVO(A)(第3文型)は「与格構文 (dative construction)」と呼ばれます)。

「他動性」とは「他動詞 (transitive verbs)」が目的語(名詞)に与える影響力のことです。覚えるべきは、目的語が2つある場合、動詞の直後の目的語に対する影響力が大きくなります。なので、(e) taught の直後の名詞 "Ken" に対する影響力が大きい、つまり Ken の変化(Ken が英語を習得したこと)に焦点が当たるわけです。それに対して、 (f) では目的語は1つしかなく、当然、目的語である "English" の変化(Ken の方向へ (to) 教えられた)ということが焦点化される訳で、 Ken が習得したかは含意されません(分かりません)。 情報構造は、とても重要な概念で、すべての英文はこれに支配されていると言っても過言ではないので、時を改めて詳しく見ていくことにしましょう。

 

以下の3つの英文で、主観的な発言から客観的な発言の順になるように並び替えよ。

(g) He seemed happy.

(h) He seemed to be happy.

(i) It seemed that he was happy.

答えは、(g), (h), (i) の順です。微小なニュアンスの差になりますが、(g) は彼の表面だけを見て「嬉しそうだった」だという主観的な発言。それに対して (i) になるにつれ、その他の材料をも考慮してた上で(少し時間をかけて推論した結果)、客観的に「やはり彼は嬉しかったのだろう」と言っている感じです。これは少しレベルが高かったと思うので、忘れてくださっても結構です。 

 

次の英文におけるカッコを埋めよ。

This coffee is (      ) hot. I don't like it so hot.  

(j) fairly

(k) rather

答えは (k) rather です。両者とも日本語では「かなり」と訳される副詞ですが、fairly が「(良い意味で)かなり」なのに対し、rather は「(悪い意味で)かなり」です。文脈上、「このコーヒーかなり熱いよ。私、そんなに熱いのはちょっと…」なので、悪い意味の形容詞とコロケーションを作りやすい rather が正解。

 

以下の英文で、自ら義務を負わせるように「宿題をやらなきゃいけないんだ」と意気込んでいる文脈で言っている発言はどっち?

(l) I must do my homework.

(m) I have to do my homework.

答えは (l) must です。(m) have to だと「いやいや」感が漂っています。must はかなり主観的で、主語が1人称の場合は「自らに義務を負わせている感じ」で、対する have to はいくぶん客観的な表現、また「やらせ」感を伴う表現。(宿題をしないと)教師や親がグチグチうるさいから、といった文脈で「仕方なく~しなければならない」ことを表します。

また、友達に謝るといったコンテクストだとすれば、"I must apologize." となり、have to は使えません。謝るという行為とは、「反省を込めた言葉」であって、「いやいや謝る」ものではないですよね?

その他、need to は前者2つの助動詞と異なり、「…する必要がある」といった要点だけをのべるストレートで含意の無い表現です。

ネイティブが教える 英語の語法とライティング

ネイティブが教える 英語の語法とライティング

 

 

ようやく冬が終わって温かくなってきた。以下の英文で「春が来た!」を表す正しい表現はどっち?

(n) Spring came.

(o) Spring has come.

答えは (o) has come です。「過去形」と「現在完了」の違いですが、 過去形は「現在」とは関係がありません。(n) だと、単に過去のことで「何年前?のことについて語ってんの?」というふうになります。過ぎ去ってしまった1つの出来事を現在から遠くに見える「」として語っています。それに対して、完了形は文字通り「現在」完了形なので、あくまでも「現在」の出来事(状態)をメインに語っています。

しかし、現在完了形でも、過去の1点から「現在」までを結んだ直線の中で、どこに焦点が当たるかは場合によりけりです。でも、とてもシンプルです。直線全てがイメージされれば、「継続」用法(ex) 「生まれてからずっと東京に住んでいる」)となり、その直線から任意に3つの点だけを焦点化するのであれば「経験」用法(ex) 「これまでに中国に3回行ったことがある」)となり、直線の右端(現在)だけが焦点化されれば「完了・結果」用法になるだけです。(これは僕の考えですが、「認知言語学」における「前景化 (foreground)」と「背景化 (background)」―もしくは「図 (figure)」と「地 (base)」―の観点を上手く取り入れた説明であると考えています)

 

和訳問題

(p) The bus is stopping.

(q) Mike is drowning in the river. 

答え (p) 「バスは止まりかけている(が、まだ完全には止まっていない)」(q) 「マイクが川で溺れ死にかけている(が、まだ死んではいない)」です。

次の設問で-ing に関しては述べますが、-ing は、「~の途中」を表します。間違っても、「バスは止まっている」や「マイクは川で溺れ死んでいる」などと訳してはダメですよ。それだと、バスは静止しており、マイクは既に息絶えて(死亡して)いることになってしまいます。生きてるマイクを勝手に死なせては殺人です(笑)

 

True or False? (正しい表現なら T を、間違いなら F を)

(r) I'm living in Kawasaki.

(s) You are resembling your mother year by year [/more and more as time goes by].

答え。(r) T, (s) T

学校文法では、know, live, resemble などの「状態動詞」は進行形に出来ないと習いますが、ウソなので忘れて下さい。動作動詞だが、状態動詞だが、それは全く無関係でなんです。そんな面倒な事を覚えるのではなく、どんなときに「進行形 (-ing form) が使用されるか、-ing のスキーマ (schema)」(核心語義)を知っていればいつだって応用可能です。-ing のスキーマは「変化(動作)の途中」です。そこから「不安定」や「動的(生き生き感)」などのイメージが派生してきます。「変化の途中」さえ知っていれば十分対応可能ですよね?

具体的に設問を見ていくと、(r) では、「川崎に住む」という行為・状態の「途中」にあるという状況がイメージできれば、進行形で正しいということになります。例えば、「半年後は東京に引っ越すことが決まっている」といった文脈など。すなわち、動詞によって進行形にできるか否かが決まるのでなく、進行形の「途中(行為・状態に終わりがある)」という状況がありえる場合は、そういう意味でのもと、進行形が可能になるということです。実際、この I'm living in...という表現(今は、一時的に…に住んでいます(その後はまた引越しします))は、僕自身、用いる表現が多い表現で(大学生には引っ越しがつきもの)、英語ネイティブ話者の留学生も、不自然なく受け答えてくれます。

(s) でも同様に、「母さんに似ている」といった「普遍の状態」(変化がない・安定)を表す場合は "You resemble your mother closely." よいうふうに「現在形」を使います。そして、このような例の方が一般的です。しかし、"year by year"(年々)"more and more as time goes by"(時が経つにつれてますます)などのような、「変化」を表す語句を伴っていることからも、ここでの動詞 resemble は、明らかに「変化(の途中)」を表していますよね?すなわち、-ing のスキーマにぴったり合致するので、この意味においては進行形でいいのです。

イメージで捉える感覚英文法―認知文法を参照した英語学習法 (開拓社言語・文化選書)

イメージで捉える感覚英文法―認知文法を参照した英語学習法 (開拓社言語・文化選書)

 

 

どうでしたか?これらの問題で、読者の方の多くの盲点が外れたのであれば、嬉しい限りです。しかし、これらの内容は、無数ある例の中の限られたごく一部に過ぎません。

そして、僕がこのブログでこのような説明をしていることは、何も自分の専門分野の知識をひけらかしたいからではありません。そうではなく、現在、英語を話したり(書いたり)、つまるところの「発信型英語」を学習されている方の中の、あまりにも多くがアウトプットの練習だけをしていて、「なかなか身につかない」と嘆いているのを聞いてて、原因はもっとごくごく単純なのになと感じることがしばしばあるからです。

こういう僕は、大学では言語学専攻で、主に、英文法や人間の認知や心理面に興味を持っていろいろと文献をあさっては読んでいるのですが、単にそれだけで、とりたてて帰国子女のように英語がぺらぺら話せるという訳では全くありません(コミュニケーションには全く問題ありませんが)。しかし、言語や認知に関して研究を続け、今のところ博士まで進もうと考えている関係上、効率の良い学習法は自信を持ってアドバイスできると考えています。(※第二言語獲得 (Second Language Aquisition; SLA) に関する文献は、まだそれまで多く目を通せていないので、おいおい紹介できたらな、とは考えています)

 

最後に。

「文法にとらわれるから英語を話せないんだ」という発言をする人たちには、一利あるとも考えています。しかし、そのような発言が妥当性を持ちうるのは、多くの高校で渡されるような無意味な細分化」で溢れる、従来の認識における「文法書に載っている」文法に関してのみです。

ここでぼくが提唱させて頂いているような、「認知文法」を中心とした、良いとこ集めの「文法体系」は、「ネイティブの感覚」そのものを手に入れるために外国人学習者用に設計された「文法」とでも呼べるようなものであって、暗記すべきものではありません。会得するのに時間もかかりません(どれだけみっちりやっても1年程でしょう)。そして、暗記するものでないため忘れることもほとんどありません。感覚として身につければよいだけなのです。

 

是非、あなたの英語を、ダイナミックで、活気あふれる表現に満ちたものに変化させていってもらえれば、何よりの幸せです。

何か不明な点があれば、こちらのブログにいつでもご連絡ください。

 

では、また来週お会いしましょーう♪ 

 

 

睡眠に関する危険な盲信―脳科学から見るアルコールやカフェインと睡眠の関係―

数か月前に facebook でも睡眠に関係する記事を投稿したのですが、あの時の文章はいささか不完全だったと思いましたので、今回、改めてこのブログにて「睡眠」のメカニズムを説明していきたいと思います。

 

今回は、脳科学における研究で分かってきたことをもとに、まず「睡眠とは何か」という話を、以前よりも詳細にしたいと思います。次に、「眠気対策としての効果的な方法」や具体的に「カフェインやアルコールと睡眠との関係」について見ていきます。「眠気覚ましにコーヒーを!」、「寝付きやすいようにお酒を!」といった安易な判断には危険が伴います。そのためにも、知っておきたい意外な盲点を紹介したいです。

 

まず、私たちが「何のために睡眠をとる(とらなければならない)のか?」ですが、ズバリ「脳と身体を回復(休息)させるため」です。これに異論はないと思います。しかし、身体だけであれば、少し横になってじっとしているだけでもある程度は回復できますが、疲れた脳を回復させるためには、「睡眠」しかありません。

 

また、睡眠には「non-REM睡眠」 (眼が動かない睡眠, 主に脳が回復する) と「REM睡眠」 (眼がピクピク動く睡眠, 主に身体が回復する)があります。

 

REMというのは "Rapid Eye Movement" の頭文字です。REM睡眠では、身体が回復し、脳が活発に動いている睡眠です。この時間の脳の主な機能として、情動中枢の大脳辺縁系(怒りや恐怖などの情動を司る)中の「海馬」や「扁桃体」を中心に、「短期記憶」を「長期記憶」に変換する役割があります。

 

眼が動く理由は、「海馬」などにアクセスする神経回路が眼球の運動神経回路の近くを通っているために電気が流れちゃうからと行動心理学では言われているのですが、実際はまだよく分かっていないそうです(苫米地英人, https://www.youtube.com/watch?v=1ZehLWTbUNc) 25:00 あたりです。よければご覧ください)

「イヤな気持ち」を消す技術

「イヤな気持ち」を消す技術

 

 

そして眠りについた後、まずはnon-REM睡眠から入り、次にREM睡眠へ変化し、これを1セット(90分周期)として、複数セット繰り返しています。睡眠には「ロングスリーパー」と「ショートスリーパー」がいて、個人差が大きいのですが、一般的には、最低でも4セット(6時間)の睡眠が好ましいと言われています。

 

茂木健一郎さんは、自著『脳が冴える快眠法』(p. 37)で、「ハーバード大学のチャールズ・チェイスラー医学教授の研究によれば、24時間睡眠をとらない場合、あるいは5時間以下の睡眠を1週間続けた人間の状態は、血中アルコール濃度が0.1%程度で、お酒を飲んだほろ酔いの状態に近い」と述べています。

 

では次に、「何で眠くなるのか?」という話に移ります。 これには理由が2つあります。全く異なるメカニズムです。1つ目は、「サーカディアンリズム」で、2つ目は「ホメオスタシス」です。

 

サーカディアンリズム」(概日リズム)とは、我々のよく言う「体内時計」のことです。我々人間の「サーカディアンリズム」は約25時間です。しかし、私たちは24時間を1日として生活しています。なぜ24時間でも支障が出ないように生活していられるかというと、太陽の光刺激を受けることで、毎朝リセットしているからなんです。そして、朝起きて太陽光を浴びてから約15時間経過すれば、睡眠を誘うホルモンの「メラトニン」の生産さが加速されます。これが、眠気の第一要因です。

 

一方、「ホメオスタシス」とは生理学用語で「恒常性維持機能」と訳されます。暑かったら汗を出して熱を発散させたり、寒かったら毛穴を閉じて体温の放出を抑えたりといったように、外の環境の変化にとらわれず、体内の状態を一定に保つ働きのことを「ホメオスタシス」と言います。すなわち、脳や身体に疲労が蓄積すれば、自然と回復するように眠気に襲われます。皆さんも、夜勤やカラオケオールの後は、朝昼晩に関係なく眠くなりますよね?これは、単に「疲れたから」であって、こういう眠気は「ホメオスタシス」の働きによるものです。これが眠気の第二要因です。

 

ようやくですが、ここまでで睡眠に関する大まかなメカニズムは把握できたと思います。では、最後に「寝だめは出来るのか?」、「眠気対策」、「カフェイン」、「アルコール」との睡眠の関係に移りたいと思います。

 

「寝だめは出来るのか?」に関しては、答えはNo. です。

茂木健一郎さんも、先ほどの著書(p. 84)ではっきりと、「「スリープ・デッド」と呼ばれていて、過去の睡眠不足(借金)を補うことはできるのですが、未来への睡眠(貯金)はできない」と述べています。また、宮崎総一郎さんの『脳に効く「睡眠学」』でも、1964年に世界記録に挑戦し264時間12分の間ずっと起き続けたアメリカの高校生は、その後14時間ほど睡眠をとった後に再び正常に戻ったという記述があります。このように、過去の睡眠不足は補うことが出来ても、「寝だめ」は出来ないのです。  

脳に効く「睡眠学」 (角川SSC新書)

脳に効く「睡眠学」 (角川SSC新書)

 

 

「眠気対策」に関しては簡単で、「仮眠をとること」です。

これは、どんな睡眠に関する本にも挙げられるほど有名かつ効果的な眠気対策法です。2011年に、アメリカの航空管制官の居眠りが問題になりましたが、その後アメリカの国家運輸安全委員会管制官に「26分の仮眠をとること」を義務付けたくらいです。ドイツのデュッセルドルフ大学の研究では、6分程度の仮眠でも実に効果があるとされていますし、60分の仮眠は、その後の脳を10時間活性化させるとする研究もあります。

この時のポイントは、「ベッドや布団で寝ないこと」です。本格的に睡眠をとってしまえば、肝心な夜の睡眠の質を下げてしまったり、眠れない原因となってしまいます。

 

アルコールと睡眠に関しては、「飲んだとしても少量に抑えること、あるいは飲んでしまっても就寝3時間前には必ず飲み終えること」 です。

大量に飲まないことが理想的なのは言うまでもないことですが、少量のアルコールは脳内のGABAという抑制性神経伝達物質を増加させ、逆にドーパミンノルアドレナリンを減少させます。なので、「少量を就寝の3時間前に飲み終える」が最も理想的です。

では、就寝直前に少しでも飲酒をした場合の睡眠の質はいかがなものなのでしょうか?

それは、睡眠中に「無呼吸」という低酸素状態が頻繁に訪れる、という現実です。鼻腔と口腔が喉の奥で交わる「上気道」という部位があるのですが、そこの筋肉が緩んで酸素が十分に肺に行き渡らなくなります。結果として、「朝の目覚めが悪い」だけでなく「日中もダルイ状態が続く」という悪影響があります。

お酒は、就寝よりだいぶ前には飲み終えましょう。

 

最後に、カフェインと睡眠の関係についてですが、「就寝の直前に200mg以上とった場合は、睡眠中かなり頻繁に「覚醒」に近い状態が発生する」ことです。

人は、疲れてくると疲労物質が睡眠中枢に働きかけ、眠気を引き起こすのですが、その疲労物質のアクセスを妨害するはたらきがカフェインにはあります。睡眠中、幾度も「中途覚醒」が起こさせるようになって、浅い眠りしか取れず、朝に起きても眠たかったり、疲労が完全に取れなかったりします。

カフェインの持続効果は30分後に始まり4時間後まで続くので、遅くとも、体温が下がり始める(メラトニンは体温低下によって生成が加速される)午後7時~9時以降にはコーヒーや紅茶などは飲まないようにすれば、眠気への影響は最小限に抑えられ、ぐっすりと深い睡眠がとれます。

 

以上、睡眠について脳科学的に述べさせてもらいました。

不完全な部分も、言い足りない部分も、まだまだあるのですが、大体はこれだけの知識があれば、睡眠はガラッと変わるのではないでしょうか?

 

高校生時代、英作文で、People spend one-third of their life sleeping.  (人々は、人生の約3分の一を眠って過ごす)というセンテンスを書いたのを覚えているのですが、高校生の英作文の問題になるほど、我々人間は睡眠の時間を惜しく感じているのでしょうか?

 

しかし、REM睡眠時の脳のエネルギー消費は、起きて活動している時(覚醒時)と変わらないと言われているほど、活発に動いています。睡眠は、脳や身体を回復させているだけではありません。短期記憶を定着(長期記憶化)させていたり、むしろアクティヴに活動しています。この脳の働きが無ければ、我々は何も覚えることが出来ません。次の日の朝に目が覚めたら、また1から学習しなおさなければならなくなってしまいます。

 

睡眠の時間を無駄だと考えるのは、睡眠に関する知識がないからです。無意識の脳の働きを理解していないから、仕方がないのかもしれませんが、、、

 

是非とも、睡眠のよき理解者となって、健康で快適でハッピーな人生を送りたいものです。

 

 

その他、睡眠に関する本を以下に挙げておきます。 

<眠り>をめぐるミステリー―睡眠の不思議から脳を読み解く (NHK出版新書)
 

 

「何かのため」に頑張るのではなく、「それ自体」を楽しむ!―内発性を大切に―

突然ですが、皆さんの趣味は何ですか?

 

ギター、サッカー、サイクリング、筋トレ、映画鑑賞、ショッピング、資格試験、、、

といったように、皆さんそれぞれ何かしら趣味があると思います。

ちなみに、僕の場合は、読書(といっても小説は読まないのですが)と、カラオケです。

 

ここで皆さんにお聞きしたいのが、「それらが「何のため」の趣味なのか」です。

大半の方は、「「何のためか」なんて聞かれても、そんなの知るかよ」と思ったはずです。

 

そうです、趣味とは「何かのため」にやるものではなく、「それ自体」を楽しむものです。

楽しいから、興味を持ってしまって、ついやってみたくなるものです。

 

ところが、世の中のビジネスマンには、「技術上有益だから仕事に役に立つ趣味を作る」ということがあるようです。本来、趣味とは「それ自体」を楽しむものであって、「お金を稼ぐのに役立つから始める」モノではないはずです。お金稼ぎという「目的」が介在している以上、残念ながら、それは趣味とは言いません。

 

ここでは「趣味」を例にとって話を進めているのですが、何も僕は、趣味論者で「趣味の在り方」についてどうこう言いたいのではありません。何が言いたいのかというと、「自発性」ではなく「内発性」こそが大切だということです。

 

「自発性」といえば、何かを進んでやるというポジティヴなイメージを持たれる方が多いと思いますが、これではまだ不完全です。何故かと言うと、「自発性」には、まだ「何かのために」という目的が残っているからです。ここには<損得勘定>の概念があります。得をするために何かをする、というのが「自発性」です。

例えば、「有名大学に合格する "ために" 勉強する」とか、「試験で単位をゲットする "ために" 教科書を読む」というのは、どちらも「目的」が残っているために「自発性」です。裏を返せば、受かりそうにない、試験で単位が取れそうにない、と分かった瞬間に勉強へのモチベーションは急激に低下してしまいます。

 

それに対して、「内発性」は「内から湧き出てくるもの」です。ここには、もはや目的が存在していません。強いて言うと、「それを行うこと」自体が目的だということです。ここには<損得勘定>の欠片もありません。損をしても得をしても、それ自体が楽しいから何かをするのが「内発性」です。社会学者の宮台真司さんは、「内発性」のことを、「理由のない利他性」という言い方をしています。 

「絶望の時代」の希望の恋愛学

「絶望の時代」の希望の恋愛学

 

 

また、社会心理学には「達成性の動機づけ」コンサマトリー性の動機づけ」と呼ばれる概念があります。これらは、「自発性」と「内発性」の関係と似たような関係です。「達成性」は何かを成し遂げる "ために" 行うことで、<プロダクト志向(結果重視)>です。対する「コンサマトリー性」は、例えば、音楽を聴くとか、読書にふける、というふうに、それ自体を楽しむもので、<プロセス志向(過程重視)>です。

 

このように、本来の意味で、何かを楽しむためには、「内発性」=「コンサマトリー性」が不可欠であることが分かります。本当に楽しいことであれば、たとえ1人でやっても楽しい事です。そこには<損得勘定>もなければ、理由も目的もありません。それらは<プロセス志向>だからです。もし皆さんが、最近トライしていることで、「一生懸命やってるのに、何故か上手くいかない、継続しない」という経験をされているのであれば、一回立ち止まって息抜き程度でいいので、「私は本当に今のことを楽しめているのかな」と考えてみて下さい。

 

そして、もし今やっていることが、誰か他人の価値観によって決められた目的のためにやってるなと気づいたのなら、いっそのこと止めてしまいましょう!残念ながら、世の中にはやりたくなくても、やらなければならないことが山ほどあるのは事実です。しかし止めたところで他の人に大して影響しないことであれば、さっさと辞めてその時間をもっと大切なことに費やした方がいいと思います。 私たちの時間は有限です。しかも、その1/3は睡眠によって嫌でも削られていきます。

 

世の中に出回る、誤った価値観にしばられることが決して無きように、「内発性」と「コンサマトリー性」を大切に、これからの人生を過ごしていきたい―これが僕の考えです。

 

これはすなわち、自分自身の内なる力に耳を澄まし、自分自身の声を聞いてあげるということに他ならないのではないでしょうか?

 

たまには、自分と対話をしてみる時間をとることも、僕は大切だと思います。

 

みなさんも、ぜひ、普段聞くことのない「あなた自身の声」を聞いてあげてみて下さい。

「つまらない会話」の重要性―weak tiesでスコトーマを外せ―

「あの人と話してたら楽しい!」「あの人と一なら、一緒にいたい!」

そのように思わせられる人は、コミュニケーションが上手だと言えるだろう。

多くの女性にモテる男であったり、プロのナンパ師などは、このように、「楽しい会話」を作る能力が高い人たちである。

 

では、逆に「つまらない会話」とは、何だろうか。

一般に、「他人の批判ばかりする人」や「愚痴ばかりこぼす人」、「いつもいつも同じネタばかり繰り返す人」とは、会話しても楽しめないし、一緒に居ても居心地が悪いと感じてしまう。このような会話しかできない人とは付き合う価値もないし、時間の無駄である。「百害あって一利なし」とは、まさにこのことである。

 

それに加えて、我々は、趣味や興味が全く違う人と居る時にも、「あの人とは会話が続かない」、「何となく退屈だ」と思うことがある。それらも同様に、おそらく、「つまらない会話」だと感じてしまうだろう。自分の興味範囲で話が出ると楽しいし、知らないことばかりだと飽きてしまう。

 

しかし、このような後者の意味での「つまらない会話」は、時間の無駄かと言えばそうでもない。むしろ、このような会話にこそ注意を払う必要がある。自分にとって得になる場合が多い。

それは何故か?

 

社会学者マーク・グラノヴェッタの、The strength of weak ties (Granovetter 1973) における、"weak-tie hypothesis" すなわち、「弱い繋がり」 とは、「家族や親しい友人、クラスメートのような「強い繋がり」の関係ではなく、むしろ触れ合う事の少ない、「弱い繋がり」の関係にこそ、自分にとって重要な情報を発見できる可能性がより多く隠されている」という仮説である。

 

普段一緒にいる人達との会話ばかりでは、マンネリ化が進むし、とりたてて新しい情報は得られない。親しい間柄の友人との会話は確かに「楽しい会話」だが、有益な情報伝達という観点から言えば、効用はゼロに等しい。勿論、それらの会話を楽しむのは決して悪くない。しかし、それだけでは思考やモノの見方が偏ってしまうという話である。言い方を変えれば、本来得られたはずの有益な情報が、苫米地英人氏(カーネギーメロン博士)のいう「スコトーマ(盲点)」に隠れたまま、視野が狭くなってしまうということだ。

 

誰にでも「スコトーマ」は存在する。それは必ず存在する。人間の脳には、(A) RAS ((Ascending) Reticular Activating System) という部位がある。「(上行性)網様体賦活系」だ。この働きによって、自分(脳)が「重要だ」と思ったモノははっきりと認識され、逆にそうでないところは意識にのぼらなく(見えなく)なってしまう。その「重要だ」というのは、意識的に「重要な」何かを探している時もそうだし、今までの経験から自分の思考が、無意識に何かを「重要だ」と決めつけている時も含まれる。 

「言葉」があなたの人生を決める【実践ワークブック】

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要するに、「楽しい会話」は十分に楽しむものなのであるが、「楽しい会話」だけを追いかけていると、重要なことが「スコトーマ」に隠れてしまって、逆に損をしてしまうということだ。たまには、いや、常日頃から、「つまらない会話」には最大の注意を払って聞くことが重要なのである。真の意味で自分に必要となる有益な情報は、「つまらない会話」にしか無いと言えるかもしれない。

 

同じ分野の人たちは「同じ思考」をもった人たちの集団である場合が多い。しかし、違った専門分野の人たちとなら、自分にとって、今まで考えもつかなかったような「ハッとさせられる大発見」に遭遇できる可能性は高い。 

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