Consummatory Life

英米文学専攻の大学生が、もっぱら言語学、心理学、脳科学の話をテーマに、人間や社会について、感じたことを発信していきます。より良い人生を開発していくことを目指します。

抽象的思考と具体的思考 ― 〈視点の高さ〉と〈情報量〉から考える!

こんばんわ!DOPAです^^

今日は、連載「抽象的 vs 具体的」〈第1弾〉です

 

このテーマに関しては今回が初回なので、まずは「抽象的」「具体的」といった用語の意味について「視点の高さと情報量」の観点からやや詳しくしていきたいと思います。

具体的と抽象的

皆さんは、友達や知り合いと話しているときに、「もっと具体的に言ってよ!」と言われたり、はたまた、議論中に自分の意見に対して他の人から「それは抽象論にすぎない」などと言われてショックを受けた経験はありませんか?。

 

でも、そもそも「具体的」や「抽象的」とは、どういった意味なのでしょうか?

 

大学受験で現代文を勉強した経験のある方であれば、これらの用語について親しみ深いかもしれません。また、そうでない方も、日常的な日本語の会話の中で意識することなく使っていると思います。「具体的」といえば「分かりやすい」クリアなイメージを、「抽象的」といえば、何となくお茶を濁したような「分かりにくい」イメージを抱かれると思います。

そういう感覚は間違っていません。

 

今回は、それらの持つ意味について、

認知科学者の苫米地英人の著書『心の操縦術』(PHP文庫)にならい、

1. 「視点の高さ」2. 「情報量」

という2つの観点からアプローチしていきます!

心の操縦術 (PHP文庫)

心の操縦術 (PHP文庫)

 

実はこの本、プロ野球巨人の原監督もお読みになり、大変感動したと言われている本なんです。是非みなさんも一読してみてください。新しい思考法や、何らかのヒントが得られるだろうと思います。

 

さてここで、本題に入る前に少し余談なのですが、勝間和代さんが、ご自身の著書『高学歴でも失敗する人、学歴なしでも成功する人』(小学館101新書)の中で「頭がいい」もしくは「優れた」人に関して、次のようなことを述べています。

 

彼女によると、「アカデミック・スマート」(academic smart) ではなく、「ストリート・スマート」(street smart) という観点で「頭がいい」もしくは「優れた」というのは、インプットに関しては、「世の中の情報の真偽をしっかりと見抜いて、ほかの人が気づかなかった情報を持っていたり、あるいは、さまざまなあふれる情報の中から、『より良質なものを抽出できたりする能力』」(二重括弧は筆者)のことだと。

 ここでいう、情報を「抽出する」能力と、いま問題としている「抽象的」とは、意味的に密接な関係があります。

 

そもそも、「抽象」というのは、「複数のものから、全てにおいて共通する1つの特徴だけを『抽出する』こと」を言います。そして、その過程において、その特定の(抽出された)全てに共通でない特徴は切り捨てられます。それを「捨象」といいます。何かを「抽象」すると、必ず何かを「捨象」することが同時に起こるので、英語では abstraction という単語で両方が意味されます。

 

 

例えば、イヌ、ネコ、ゾウ、キリン、ブタという5種類の動物がいたとします。

それらに共通する特徴は何があるでしょう?

そう、「動物」ですよね。

それ以外にも、「哺乳類」「生物」「有機物」「目がある」「毛が生える」, etc. 何でもありです。

 

重要なのは、そう答えたときに、我々が「抽象化」という行為を行ったということです。そして、その「抽象化」を行えば、必然的にその他の特徴は「捨象」されています(例えば、イヌが「ワンと吠える」こと、ネコが「ニャアと鳴く」こと、ゾウは「鼻が長い」こと、キリンは「首が長い」こと、ブタは「太くてブゥと鳴く」こと, etc.)。

 

それでは、「具体的」とは何でしょう?

ネットの『Goo辞書』の「具体的」の定義は、「はっきりとした実体を備えているさま。個々の事物に即しているさま」とあります。

 

逆に「抽象的」の定義は「いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま」とありました。つまり、「抽象化」とはある種の「一般化」とも言えそうです。

 

 

これらのような辞書の定義でも良いのですが、あまり日常生活や仕事、ビジネスで使えそうな説明ではありません。

以下では、もっと踏み込んだ、現実的 (practical) な解説をしようと思います。

 

「視点の高さ」と「情報量」から考える

ここで、皆さんにエジプトの墓、ピラミッドを思い浮かべてもらいましょう。

(※ピラミッドを登るときは、自分の目線より下しか見えないということにします)

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高く上がれば上がるだけ、より遠くが見渡せるようになりますね。しかし、ピラミッドの面積はというと、逆に、高く上がれば上がるだけ小さくなっていきます。

 

ここでの「高さ」を「抽象度」(視点)、ある高における「面積」を「情報量」としましょう。そして、「抽象化」(もしくは抽象的な思考をする)という行為は、物事をより高い視点で見渡すということです。

 

すると、抽象化をすると、「視点」が高くなりますが、その地点のピラミッドの面積=「情報量」は減少します。しかし、見渡せる範囲(潜在的な情報量;ここでは、自分の地点より以下のピラミッドの体積)は増加します。

 

先ほどの、5種類の動物を例にとりましょう。

 

             動物

           ↑

    イヌ、ネコ、ゾウ、キリン、ブタ

 

「イヌ」や「ネコ」など五種類の概念を「抽象化」したのが「動物」という概念です。

つまり、抽象度(視点の高さ)が上がった分、概念に含まれる情報量は減りましたよね?

 

最初はここの理解に少し苦しむのですが、こう考えればいいでしょう。

「動物」という概念に、「4本足で歩く」「ワンと吼える」「ペットとして一般的に飼育される」「走るのが速い」「聴覚と嗅覚がとてもいい」などの情報を加えていって、やっと「イヌ」という概念にたどり着きます。したがって、「イヌ」よりも「動物」のほうが情報量は少ないわけです。

 

しかし -- そして、ここが盲点なのですが -- 確かに、「動物」という概念自体が持つ情報量は、「イヌ」のそれより少ないのですが、

 

「潜在的に持つ可能性のある情報量(見渡せる範囲)」という意味では、「動物」のほうが「イヌ」よりも多いんです。

 

だって、「動物」であれば、「イヌ」でも「ネコ」でも見渡せるわけですが、「イヌ」や「ネコ」は「動物」という概念は見渡せません(※ピラミッドでは、自分の目線より下しか見渡せない約束でした)。だって、「イヌ」が他の「動物」である「キリン」にはなれないでしょう?

でも、「動物」であれば、「キリン」は(潜在的な情報としては)含まれていますので、いざという時に「動物」は「キリン」という抽象度に降りてくることは十分に可能です。

 

繰り返しますが、抽象度は必要とあれば「降りてくる」ことはできるのですが、「上がること」はできません。すなわち、

 

「抽象的思考ができる人であれば必ず、降りてきて具体的思考も同時に行うことができる」は問題なく正しいのですが、

 

その逆の、

 

「具体的思考ができる人であれば必ず、抽象的思考を行うことができる」は偽であって、必ずしもそうとは言えません。

 

だからこそ、抽象的思考の能力だけは訓練して磨かなければならないのです。

 

 

以下において、「抽象的」と「具体的」という言葉を再定義し、要点をまとめます。

 

【Point】

〈抽象的〉思考

概念や物事を、より高い視点(情報空間)でとらえること。この能力は必要に応じて、訓練しないと身につかない。

◎メリット→見渡せる範囲が大きくなるため、グレインサイズ(1回の思考で扱える範囲)が大きくなるため、仕事が速くなる。

×デメリット→詳細は飛ばして要点のみを扱うため、個々の事柄の臨場感は減り、リアルに正確には扱えない。

 

〈具体的〉思考

物事を最も抽象度の低い空間(物理空間)でとらえること。この能力は生まれつき誰にでも -- 言ってみれば、サルやチンパンジにも -- 備わっている。

◎メリット→(1回の思考で扱う対象を「そのもの」に限り)見渡せる範囲は少ない分、詳細までリアルに見ることができる。

×デメリット→見渡せる範囲はゼロ。その時に見ている物(そのもの)しか見れない。いわば、物事をコンサマトリーに眺めること。「いま」「ここ」にしか当てはまらないので、汎用性は限られている。また、「概念」については扱えない(※何故ならば、概念そのものが抽象的であり、かつ形や臨場感が存在しないから)

 

ぜひ、皆さんも抽象的思考の能力 -- すなわち、さまざまなあふれる情報の中から「より良質なものを抽出できたりする能力」-- に磨きをかけて成功を勝ち取りましょう。

 

次週のブログ、

連載「抽象的 vs 具体的」〈第2弾〉では、新たにゲシュタルトという概念を紹介します。このゲシュタルトの概念は、「抽象的思考」にモロに繋がってきます。ゲシュタルト形成=抽象化です。

 

それでは、楽しみに待っていてください!!

今日はここまで読み進めてく下さってありがとうございました。

 

それではまた来週(^^♪