最先端の英語学習法(コロケーション)―独学で、ここまで出来る!
こんにちは!前回に続いて、今回も英語に関する記事をお届けします。テーマは、
コロケーション (collocation) ―コーパス言語学 (corpus linguistics) です。
前回は主に、「ネイティブの感覚に限りなく近づこと」を目標に、「認知文法 (Cognitive Grammar)」の概念を少し紹介させて頂きました。それによって、学校教育で教わる「従来の英文法」がどれだけ理論的に不十分で、かつ、どれだけ無駄な暗記事項が多いか、少しだけでも納得頂けたかと思います。
そして今回は、以前に紹介出来なかった有益な概念、「コロケーション」 (語と語の結びつき) と、コロケーションを独学で身につける方法を、「コーパス言語学」の観点から、少し紹介させて頂きます。現行の学校教育では教わることのないものですが、英語を受信(理解)するだけでなく、自ら発信(運用)していくのに、必要不可欠な知識です。
◎コロケーション (collocation)
ご存知の方もいるかもしれませんが、英語を学習する上で、「コロケーション」はとても重要な概念です。これは、簡単に言えば「語と語の結びつき」のことを意味します。例えば、句のレベルで、日本語で「Aに影響を与える」といった動詞句に該当する英語は、一例として、
(1) have an influence on A
ように表すことが出来ます。ここで重要なのは2点あります。それは、
1. 名詞influenceに対して、動詞haveが連結している →have an influence
2. 名詞influenceに対して、前置詞onが連結している →an influence on B
ということです。すなわち、名詞influenceのコロケーションは、左側に動詞have, 右側に前置詞onをとることが分かると思います。これは名詞のコロケーションの場合ですが、同様に英語には、名詞、形容詞、動詞、前置詞...など、全てのレベルでのコロケーションが存在し、コロケーションが弱くなっていけばいくほど、その表現が受け入れられにくくなります(難しい表現を使えば、「容認度 (acceptability)」 が下がると言います)。
例えば、先ほどの「Aに影響を与える」という日本語を、英語に逐語訳 (word-for-word translation; literal translation) して、(2) のような英文を作ったとすれば、
(2) ?give an influence to A
文法的には正しい英文であっても、 コロケーションの観点から言えば極めて不自然 (strange) と判断されます。
多くの場合、日本人英語学習者がネイティブ話者に不自然だと言われる場合は、主に以下の3つの場合があると言えます。そして、 この3つの中でも、
1. コロケーションに問題がある場合
2. 文体 (style)―口語 (spoken) と文語 (written)―の使い分けができていない場合
3. コロケーション、文体、共に問題ないが、語の選択 (word choice) 自体に問題がある場合
そして、 この3つの中でも、 中級レベルの学習者に最も多いのが、「1. コロケーションに問題がある場合」であると言えそうです。コロケーションにおける問題とは、簡単に言うと、「そんな表現は英語にないよ」というレベルでの過ちです。これは、多くの英語を読んだり聞いたりしてさえいれば自然と表現のストックが増えていくので問題ありませんが、日本人は「日本語の逐語訳では適切な英語は話せない」と頭ではしっかり認識していながら、いざ話すとなると無意識にこの「逐語訳」をしてしまう傾向があるように感じます。
以下では、「コーパス言語学」という分野の知識を利用して、圧倒的なスピードで身につけられ、なおかつネイティブ話者に聞かなくてもいい「コロケーション学習法」をお伝えします。簡単で有名な方法には以下の2つあります。
1. 「Google検索」を利用する方法
2. BNC や COCA などの「言語コーパス (linguistic corpus)」を利用する方法
今回は、1の「Google検索法」を紹介します。
1. 表現(コロケーション)が正しいかどうかをチェック
2. どんなコロケーションをとるか調べる
そして、Google検索では、必ず調べる語句を引用符(" ") で囲み、その後に「半角スペース」空けて、site:us (site:uk) (スペースなし)を付けて検索にかけます。これだけです。アメリカ英語(イギリス英語)の指定がないと、非ネイティブのデタラメな英語も含まれるので、必ず site:us もしくは site:uk 指定してください。
例えば、1において、"have an influence on" という表現そのものが正しいか(ネイティブによって使われるか)どうかをチェックするためには、以下のように検索をかけます。
"have an influence on" site:us ―約36,300件
すると、約36,300件のヒット数が得られるので、「まずは使われる表現だろう」と推測を立てることが出来ます。
これに対して、先ほどの不自然な英語の例として挙げた "give an influence to" という表現を、同じ方法で検索にかけてみると、
"give an influence to" site:us ―4件
4件しかヒット数が得られず、流石にこれは不適切な英語表現だということが分かります。
次に、2において、「...に影響を与える」という日本語を英語にするとき、名詞influenceがどんな動詞によって導かれるかが分からないときに、その動詞を調べる方法です。以下の様に、動詞の部分をそのままアスタリスク (*) に変えて検索にかけて下さい。
"* an influence" site:us
すると以下のように、検索をかけた(引用符で囲んだで)部分が全て太字(ゴシック体)になって結果が得られます。
...have an influence on the G-3 decision-making process...
...have an influence?...
...But, when there is an influence,...
...exert an influence...
注意深く観察したいときは、検索結果のページを何ページも行ったり来たりして確認してください。以上の結果から、名詞influenceは、動詞have, exert, there isによって導かれる場合が圧倒的に多く、これらのコロケーションが良いことが分かります。そして、付随的に、名詞influenceの後には前置詞onが後続することも分かりました。
また、「...な影響を与える」というように、名詞influenceに先行する形容詞には、どのようなものが高頻度で使われるか調べたいときには、形容詞の位置にアスタリスクを入力して、
"have a * influence" site:us
と検索にかけます。すると、結果は、以下の様になります。
have a negative influence
have a positive influence
have a strong influence
have a great influence
have a major influence
have a huge influence
have a substantial influence
have a significant influence
have a powerful influence
have a tremendous influence
よって、名詞influenceは、これらの形容詞negative, positive, strong, great, major, huge, sabstantial, significant, powerful, tremendousとのコロケーションが良さそうだと推測できます。(検証するために、これらの表現を個別に再度Google検索にかけて、ヒット数(頻度)を比較してみて下さい)
これで、Google検索を使ったコロケーション学習法は終わりです。
Google検索の注意点として、これらはあくまでも「一時的」なものであって、さらに詳しく辞書などで確証しなければならないという点が挙げられます。何故かというと、単にwebに使用例があるだけでは、言語として適切な表現だということを100%証明することは出来ないからです。
Google検索法の他にも、BNC (British National Corpus) , COCA (Corpus of Contemporary American English) などの、「言語コーパス」を使用すれば、さらに正確なデータを効率よくスピーディーに収集することが出来ます。以下にURLを貼っておきます。使用は無料です。是非、使用してみましょう。ひとたび使えば、魅了されるはずです(笑)
また、最近はこれら「言語コーパス」などの発展によって、英語学習は数十年前と比較にならないほど効率化しています。それでもなお、日本人の英語力に目に見えるほどの変化がないのは、本当に不思議な現象に感じられます。
以下に、「コロケーション」や「コーパス言語学」の参考書を載せておきます。
コロケーション事典などは、本来であれば自分でコロケーションを調べなければならない苦労を、コロケーション事典の作成者方が引き受けてくれています。使わない手はありません。怪しげな "英会話本" を読んでいる時間があれば、『コロケーション事典』を読みましょう!
そして、「コーパス言語学」に関する知識ですが、英語教師を目指される方であれば、BNCやCOCAを使えるくらいにはなっておくべきです。なぜなら、単語や熟語、構文などを教える時に、コロケーションとして高頻度の順に教えなければ意味がないという点と、生徒の英作文などを添削するときに、コロケーションの知識がモロに要求されるからです。以下に、日本の代表格とも言える研究者の著書を載せておきます。この3月に出版されたばかりのものです。Google検索法や COCAなどのコーパス使用法、生徒の指導への応用法などが、大変詳しく解説されています。英語教師志望には必携の一冊だと思われます。
今回は、「コロケーション (collocation)」についてでした。
次回は、予定を変更しまして、今回紹介できなかった「情報構造」(information structure) について書きます。
今回は数時間投稿が遅れてしまいましたが、来週も同様に日曜日です。お楽しみに♪
では、