Consummatory Life

英米文学専攻の大学生が、もっぱら言語学、心理学、脳科学の話をテーマに、人間や社会について、感じたことを発信していきます。より良い人生を開発していくことを目指します。

「つまらない会話」の重要性―weak tiesでスコトーマを外せ―

「あの人と話してたら楽しい!」「あの人と一なら、一緒にいたい!」

そのように思わせられる人は、コミュニケーションが上手だと言えるだろう。

多くの女性にモテる男であったり、プロのナンパ師などは、このように、「楽しい会話」を作る能力が高い人たちである。

 

では、逆に「つまらない会話」とは、何だろうか。

一般に、「他人の批判ばかりする人」や「愚痴ばかりこぼす人」、「いつもいつも同じネタばかり繰り返す人」とは、会話しても楽しめないし、一緒に居ても居心地が悪いと感じてしまう。このような会話しかできない人とは付き合う価値もないし、時間の無駄である。「百害あって一利なし」とは、まさにこのことである。

 

それに加えて、我々は、趣味や興味が全く違う人と居る時にも、「あの人とは会話が続かない」、「何となく退屈だ」と思うことがある。それらも同様に、おそらく、「つまらない会話」だと感じてしまうだろう。自分の興味範囲で話が出ると楽しいし、知らないことばかりだと飽きてしまう。

 

しかし、このような後者の意味での「つまらない会話」は、時間の無駄かと言えばそうでもない。むしろ、このような会話にこそ注意を払う必要がある。自分にとって得になる場合が多い。

それは何故か?

 

社会学者マーク・グラノヴェッタの、The strength of weak ties (Granovetter 1973) における、"weak-tie hypothesis" すなわち、「弱い繋がり」 とは、「家族や親しい友人、クラスメートのような「強い繋がり」の関係ではなく、むしろ触れ合う事の少ない、「弱い繋がり」の関係にこそ、自分にとって重要な情報を発見できる可能性がより多く隠されている」という仮説である。

 

普段一緒にいる人達との会話ばかりでは、マンネリ化が進むし、とりたてて新しい情報は得られない。親しい間柄の友人との会話は確かに「楽しい会話」だが、有益な情報伝達という観点から言えば、効用はゼロに等しい。勿論、それらの会話を楽しむのは決して悪くない。しかし、それだけでは思考やモノの見方が偏ってしまうという話である。言い方を変えれば、本来得られたはずの有益な情報が、苫米地英人氏(カーネギーメロン博士)のいう「スコトーマ(盲点)」に隠れたまま、視野が狭くなってしまうということだ。

 

誰にでも「スコトーマ」は存在する。それは必ず存在する。人間の脳には、(A) RAS ((Ascending) Reticular Activating System) という部位がある。「(上行性)網様体賦活系」だ。この働きによって、自分(脳)が「重要だ」と思ったモノははっきりと認識され、逆にそうでないところは意識にのぼらなく(見えなく)なってしまう。その「重要だ」というのは、意識的に「重要な」何かを探している時もそうだし、今までの経験から自分の思考が、無意識に何かを「重要だ」と決めつけている時も含まれる。 

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要するに、「楽しい会話」は十分に楽しむものなのであるが、「楽しい会話」だけを追いかけていると、重要なことが「スコトーマ」に隠れてしまって、逆に損をしてしまうということだ。たまには、いや、常日頃から、「つまらない会話」には最大の注意を払って聞くことが重要なのである。真の意味で自分に必要となる有益な情報は、「つまらない会話」にしか無いと言えるかもしれない。

 

同じ分野の人たちは「同じ思考」をもった人たちの集団である場合が多い。しかし、違った専門分野の人たちとなら、自分にとって、今まで考えもつかなかったような「ハッとさせられる大発見」に遭遇できる可能性は高い。 

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